大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(う)2089号 判決

被告人 神保重男

〔抄 録〕

弁護人の論旨第一点について。

ある事件について弁護人が選任されている場合において、他の事件が追起訴されてこれと併合された場合においては、最初の事件に関する弁護人選任の効力が原則として併合された追起訴事件にも及ぶと解すべきことは、条理上当然であつて、この理は、私選弁護人たると国選弁護人たるとにおいて差異のあるべきものではなく、これは、従来訴訟手続において実行されて来たところである。刑事訴訟規則第十八条の二は、従来実行されていたかかる当然の事理を私選弁護について成文化したに過ぎないものであつて、かかる明文によつて始めてかかる効力が認容されたものではない。記録を検すれば、本件は、当初の事件に追起訴事件が併合されたものであつて、当初の事件には国選弁護人が附されていたものであるが、右追起訴事件の併合審理にあたり、該事件について特に被告人から弁護人の選任もなされないため、原裁判所において特に該事件について別個の国選弁護人の選任を行うことをなさず当初の事件の国選弁護人にそのまま併合された追起訴事件の弁護を行わせ、該弁護人も何ら反対の意思を表示せず、該事件の弁護に従事したものであつて、叙上の原則どおりの手続が行われたものであることが明らかであるから、所論のように右追起訴事件につき弁護人なくして公判の開廷を行つたものとして攻撃することは当たらない。なお、被告人が追起訴状謄本の送達を受けたのが、該公判期日の前日であり、弁護人が該追起訴事実を知つたのが該公判の当日であつたとしても、該公判期日においては、被告人も弁護人も何ら異議を述べることなく該追起訴事件の審理に応じたものであることは、当該公判調書の記載により明らかであり、且つ、右追起訴状を当初の起訴状と比照すれば、右追起訴事実は、当初の起訴事実と同一場所において同種の機会に行われた同種の窃盗の犯行であることは明らかであり、その内容も簡単であるから、該事件が当日結審されたからとて、所論のように、原審の訴訟手続が被告人の防禦権を不当に制限し、充分に弁護される機会を与えなかつたものとしてこれを攻撃すべきものではない。原審の訴訟手続には、所論のような法令の違反は存しない。論旨は、理由がない。

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